運動指導のバイブル

運動感覚の深層』という本を読んでいます。
今回の投稿の結論を先に述べますと、これは身体運動を指導する人間は必ず読むべき本だということです。「わざの伝承」と共に。

著者の金子明友氏のファンの私としては、出版された2015年の2月から2年半も経ってからこの本の存在を知ったことの恥と後悔の念を抱いています(知った刹那に購入した)。ファンと言ってもお会いしたこともなければ講義を受けたこともないのですが、、、以下、氏を崇める意味で金子先生と呼ばせていただきます(以下登場する恩師とは異なる人物です)。

私と金子先生の本の出会いは人前では絶対に読んでいる本を見せない恩師が一瞬隙を見せた際に偶然目に留まった「わざの伝承」というタイトルの本でした(今思えばこの出来事が本当に大きな分水嶺となりました)。運動指導者を生業としていくにあたって右も左も分からなかった私は、なんとか恩師の知見に少しでも近づきたいという思いと、あまりにインパクトのあるそのタイトルに惹かれて高額な本ながら即購入しました。

読んでみたら衝撃の内容で、運動学という学問の深さと運動指導の難しさを思い知ることになったと同時に、恩師の指導の理解が俄然深まりました。言葉にするのが非常に難しい運動指導という分野を活字で伝える困難は察して余りありますが、それを成し遂げた金子先生の凄さは称えても称えきれません。氏の知見は浅学の私にも腑に落ちるものばかりで、金子先生の本と出会わなければ今の私はないと言えるほどのものでした。

大事なことなので繰り返しますが、運動指導者は必ず知っておくべき知見です。技術コーチもトレーナーも関係なく、運動指導に携わる人は全てです。

個人的に気に入っているところを抽出すると、
“アキレス(うさぎ)は絶対に亀に追いつけない”
というゼノンのパラドックスや、
“同じ川に2度入ることはできない”
というヘラクレイトスの哲学思想。
これらを巧妙に運動学にあてはめていく様にすっかり虜になりました。

それで、ここまでが前置きです(笑)。今回なぜこんなことを書いているかというと、90歳を迎えて新たに上梓された冒頭の本には「わざの伝承」からの15年の月日の流れも汲んでおり、新たな知見も含まれた内容となっていることに驚きを感じずにはいられなかったからです。その中の一つに、今私のホットトピックとなっております幼少期の運動体験について多く書かれていました。

先日書いた「子どもに求めるもの」の中でも子どもとは言語での交信ができないと書きましたが、冒頭の本にも「言語能力が十分でない幼児たちは、微妙な感覚質を何も語ってくれないから〈借問分析も成り立たない〉」とありました。この他にも私が今のところ行きついている見識について書かれていることが多く、自分が経験してきたこと、学んできたことが間違っていなかったんだという確認ができたのも読んだ中での嬉しい感想の一つでした。

幼少期への運動指導は「ナショナルコーチ以上の高次元の感覚質発生分析に向き合わざるをえない」とのことですので、該当する指導者の皆さん、そして保護者の皆さんはその点をぜひ身につけていただきたく思います。

最後に余談ですが、金子先生の本は本当に読むのに苦労します。10ページ読むと脳はヘトヘトになります、、、。

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